自傷癖を解消する対処方法や対策・原因・特徴について
自傷癖とは
自傷癖とは、自分の体を意図的に傷つける行為を言います。日本ではリストカットと言われる、カッターナイフや剃刀などを使用したリストカットが2000年前後に多く見られ始め、特に十代の若者の中でその症状が目立ち始めました。
またライターなどで皮膚を焼いたり、腕などを血が出るまで掻き毟るなども、強いストレスや落ち込みに反応して見られる自傷行為として広く認識されています。自傷行為を行う人は異常なまでに自尊心が低く、自己を必要以上に低く評価してしまうことから、無力感に襲われることも多く、問題を解決する力が自分には無いと強く思い込んでしまいます。
何か嫌なことが起こったとき、目の前の問題から目を逸らそうと、あるいは痛みにより、精神的ストレスにより消え入りそうになる自己を強く認識するため、肉体に痛みを与え、安心するために行うなどの場合が多くみられます。この場合自殺自体を模倣して行われることもあり、辛い現実から逃れたい、という強い気持ちが衝動的に自傷を引き起こすこともあります。
また中高生の間などでリストカットをファッションとして行う者もいますが、周囲の目を引くために試しに行ってみたことが癖になり、いつのまにか辞められなくなってしまうケースなども少なくありません。また本当に自傷癖で悩んでいる人にとって非常に不快なものとして認識されることもあり、まだ自己を確立できない若年層が自傷癖という情報に触れることはリスクが大きいと言えます。
自傷癖の特徴(症状)や原因
自傷癖の原因は様々なものがありますが、その多くは幼い頃の家庭環境にあるとされています。親が経済的、あるいは精神的に自立してない場合、親が様々な意味で子に依存してしまうことがあり、充分に甘えることのできなかった結果精神的に不安定なまま成長することになります。
また親が子に対し常に否定的だった、あるいは否定する際に否定の理由をしっかり説き聞かせなかったなどの理由で無条件に自分は価値の無い、能力の低い人間だと思うようになり、自分自身への愛情をうまく育てることができなくなります。そうした結果、自分の肉体への愛情も薄れ、痛みを得て解放されたいなどの理由で衝動的に体を傷つけてしまうことがあります。
また自分を信用していないため、信用に値しない自分を愛する人間などいないと強く思い込み、他者を信用することも難しいため、周囲に悩みを相談しにくいことから、自己の奥深くへ自傷の原因をしまいこんでしまいます。また女性に多いのが怒りや攻撃を周囲に向けることができず、自傷行為にいたる場合です。
うまくコミュニケーションが取れないため、自身が常に批判されていると誤認することが多く、親が怒ってばかりだった環境の場合、その虚しさや無力感が怒りに変換されやすくなってしまいます。自分を理解してくれない周囲の人々を自身の体に見立て、怒りを攻撃としてぶつけているとも考えられます。いずれにしても自分ではうまく自傷の原因を説明できないことが多く、解決できないまま癖になってしまうことがほとんどです。
自傷癖の対策
自傷が癖になったときの対策はいくつかありますが、自傷者本人に自傷行為は良くないということや、痛みや跡になったときのデメリットなどを説いて聞かせてもあまり効果はありません。自傷の直後はモルヒネに似た脳内麻薬が分泌されるとされ、その時は痛みを感じず、脳内が興奮状態にあることが多々あります。
自傷そのものをやめさせるよりも先に、本人でも気づいていない心の闇に向き合うことが大切です。自傷は衝動的なものなので、いくら普段から気をつけていてもその衝動を抑えられないこともあります。自傷行為そのものを責めず、本人がその行為をせずにいられなかった理由を時間をかけて聞いていけば、どこかに必ず根があります。
それと同時に、自傷者の体が傷つくことで胸を痛める人間がいることもしっかり説明する必要があります。精神科などでも診療可能ですが、医師によって見解が分かれることや、投薬などを受けることにより自身が病気だと認識してしまい、逆に行為に歯止めがかからなくなるパターンもあるため、医療機関で診察を受ける際はその目的と、本人に本当にやめたいという意思があるのかを確認する必要があります。
また衝動を抑える方法として、マイナス面に強く気持ちが傾いたなと思ったら、目を閉じて一旦考えることを止め、その場で立ち止まってみるのも一つの方法です。自傷行為は逃避の一種として行われることが多いため、そのまま問題を直視せず、「大丈夫」「落ち着いて」などと自分に言い聞かせ、衝動が収まるまで自分で自分の手を掴んでじっとしてみると、衝動が収まるかもしれません。
自傷癖の解消方法
自傷癖の解消法としては他者の寄り添いが必要ですが、中途半端に話しかけるだけだと、感情を逆なですることにもなりかねません。依存の一種でもあるので、心配してくれる存在があることが嬉しくて、止めても行為をしてしまうこともあります。まずは一番大事なのが自傷者自身の体であることを伝え、一方的に説き聞かせるのではなく、共に寄り添って見守る意志を伝える必要があります。
自傷する人は、自分自身を大事にできず、自分を誇ることができないため、強いコンプレックスを抱えている場合が多いです。思い込みが強いことが多く、他者の声に耳を傾けて冷静に分析する能力も低いことが多いため、なかなか短期間でやめることは難しいといえますが、長い目で見守り、徐々に回数を減らしていくことを目標にすることが重要です。
自分自身がその行為を客観的に見つめ、その行為によって何を得ようとしたのか、それは得られたのか、やってよかったと思うのかなど、なるべく自傷行為直後ではなく、本人が落ち着いて考えられるようになってからよくヒアリングを行う必要があります。
また、本人は無自覚に行為を行ったり、原因を強く押し込めてしまっていることも考えられるため、本人が話したことのみに原因が表されているとは限りません。軽度の発達障害や強いトラウマによりうまく気持ちを表現できない事も考えられるため、時間をかけて本人が抱え込んでいる様々なトラウマを吐き出していくことが有効な方法であると言えます。
自傷癖のまとめ(未然に防ぐ方法など)
自傷癖は癖にならなければ軽度で済みますが、一度癖になってしまうと傷が深くなっていき、跡が残るばかりかエスカレートした結果本当に死にいたってしまう可能性もあります。なぜ今自身の体に傷をつけたのかではなく、なぜ自分を大事にできないのかに焦点を当てることで、本人のもつトラウマやコンプレックスを解消できるきっかけが得られるかもしれません。
傷をつけることだけでなく、自分を卑下する、自分に価値が無いといった発言も、自傷癖がある人との共通点だと言えます。常日頃から、それらの発言を根気強く否定し、その状況にいたった事を慰めるのではなく、本人のことが大切であると言うことを言葉を惜しまず伝え続けることが重要です。
できれば自傷以外のストレス発散方法があることが望ましいですが、理想的なのは適度な運動です。適度な運動はうつ病の改善にも非常に効果があると言われています。なるべく体を動かすことのできる趣味を持つことで、何かあったときにも趣味をやって発散しよう、という逃避の手段が得られることになります。
ただし中年以上になっても症状が治まらない場合や傷が深い場合、あるいはうつ病などとの併発などが見受けられる場合、生命への直接的な危険が心配されますので、速やかに医療機関で治療を受ける必要があります。ただし本人が病人扱いされることを不快に思うこともあるため、まずはカウンセリングなどを受け、自身の状況を客観視できる環境を用意することが大切です。
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